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〜 てんかん診療専門クリニック 〜





* 雑 感



 平成24年 年頭のご挨拶


 謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。
 当クリニックは、「日本一密かにてんかん診療を受けていただけるクリニック」を目標に開院して、3年半が経過しました。
 この間、通院される患者さんの数は順調に増えていますが、当院を受診されるまでの医療状況には何の変化もないように感じます。
 具体的には、
 てんかんではないのに、てんかん患者さんとして10年間以上過ごしてこられた方、
 心因性の非てんかん性発作なのに、てんかんとして抗てんかん薬を飲み続けておられる方、
 抗てんかん薬が増える一方で、眠気が増強し、却って発作も増加している方、
等々。
 特に昨年1年間は、「てんかん患者さんの交通事故」に対する過剰とも言えるマスコミ報道のため、医療者側は、診断の遅れ・治療開始の遅れを過剰に心配し、早期診断・早期治療開始の傾向が一段と強くなりました。
 また、学校や職場は、発作に伴う事故の不安に対して、やはり過剰防衛的になり、安易に休学や休職、時に退職を求めるようになってきました。
 患者さんの置かれている社会状況は、患者さんにとって不利になる一方です。
 しかし、患者さんにとって、悪いことばかりではありません。
 日本では、1980〜90年代の血液製剤のトラブル以後、新規薬剤の許認可が遅れる傾向にありました。
 これに是正が求められるようになったのも、マスコミ報道のお蔭と言えます。
 新規抗てんかん薬に関しては、2006年のガバペンチン以降、1〜2年に1剤のペースで「新薬登場」が続いています。
 2010年に発売されたレベチラセタムも、昨年秋から長期投与ができるようになりましたし、あと数年のうちに、カルバマゼピンの改良型であるオクスカルバゼピンも登場してくるようです。
 世界の中でも遅れていた日本国内において、欧米並みの抗てんかん薬メニューから、薬剤選択ができるようになる、ということです。
 しかし、新規抗てんかん薬が出そろえば、すべて解決というわけではありません。
 問題は、優秀な道具がそろっても、医師がそれを使いこなせるか否かです。
 特に抗てんかん薬の場合は、「ガイドライン」や「用法・用量」を守ったところで、うまく使えるわけではありません。
 知識や情報も重要ですが、医師個人の長年の経験と、その経験に裏打ちされた勘(かん)が必要とされます。
 新薬が数多く登場してくるため、医師の臨床能力差は、却って顕著になってくるかもしれません。
 発作の止まっていない患者さんや、発作は抑制されていても副作用に苦しんでいる患者さんにとっては、今年も、ドクターショッピングの一年になることでしょう。
 そのドクターショッピングが、患者さんにとって、新たな飛躍のきっかけとなり、ご家族の皆様にとっても、幸多い年でありますように。

 平成24年1月1日(日)


なかむらクリニック

中村 仁





この項終了

平成24年1月11日(水):公開



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